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結婚退職後、13年のブランクを経て復職。 理想の働き方は家庭優先から自分優先へ変化
PROFILE
Mさん 50代 臨床経験20年
転職を考えたきっかけは?
復職後、理想の職場と出会ったけれど
忙しさを増し、転職を決意
看護学校卒業後、大学病院の手術室に勤務していたMさんは、6年後、結婚のため退職、育児に専念する生活を選びました。やがて復帰を決意されますが、一番下のお子さんはまだ幼稚園児だったといいます。
「以前から登録していたエージェントに『お仕事どうですか?』と声をかけてもらい、ダメもとで週2回、勤務時間は9時〜15時、子供の体調次第で急に休んでも大丈夫なところなら、と条件を出したところ、当てはまる勤務先が見つかったんです。いずれは復帰しようと考えていましたし、幼稚園の預かり保育が使えたこともあり、思い切って復帰を決めました」
最初の復帰先は老人保健施設でした。そこでの勤務を一年ほど続けた後、同僚の紹介で家から近い病院へ転職しました。
「転職先の病院は家から近くて通勤が楽でした。その頃、東日本大震災があり、子供も小さかったので、何かあっても歩いて帰れる距離にいてあげたいと思ったからです。医療行為に関わる機会が多かったのも魅力に感じましたね。手術室勤務を始め、手術室の備品の管理、外来や内視鏡検査室など幅広い仕事を担当しました。
転職当初、手術室の仕事は久しぶりだし大丈夫かな、と思ったこともありましたが、杞憂でした。若い頃に覚えた技術は年齢を重ねても忘れません。20代の頃、大学病院で幅広い領域の手術を介助してきました。その経験がとても役に立っていると感じました。勤務を続けるうち、パートではありましたが、責任のある仕事ができるようになり、やりがいを感じながら働いていましたが、年々忙しくなり、転職を考えるようになりました」
Mさんは、仕事は続けるものの、子供が小さいうちは家庭を最優先して働くことを決めていました。そこで、エージェントの紹介で再び転職します。しかし、転職先では勤務条件が守られなかったといいます。
「欲を出し、常勤で勤め始めました。ところが程なく、約束がなし崩しになり、夜8時頃まで働くことも珍しくない状態でした。また、その病院では、患者さんの管理体制に疑問を感じたことがしばしばありました。そして、もうここで仕事はできないと思うようになりました」
転職活動と転職先について
訪問看護ステーションに転職後、10年勤続
50代で再転職を決意
再び転職活動を始めたMさん。ナースコンシェルジュと出会ったのはその時でした。程なく、コンサルタントと面接が決まったそうです。
「面談では、家庭のことや職歴のこと、優先したい条件などを詳細にお話ししました。家庭を優先したかったので、通勤時間や勤務時間にこだわりはありましたが、職種については強い希望はありませんでした。
コンサルタントの方は私の話をじっくり聞いてくれて、そこで提案されたのが訪問看護です。今まで全く考えたことがない分野だったので戸惑いはありましたが、時間の融通がきくことと、子供の予定を考慮して勤務シフトを組めることを考えると、家庭優先で働くには、いい提案をいただいたと思います」
そして、面接に進み、見事、内定を獲得したMさん。訪問看護ステーションでの勤務が始まります。
「利用者さんのお宅に伺って、決められた時間ケアをします。私が勤務していた事業所はがんや神経難病の方など医療依存度の高い方が多く、医療行為に関わる機会も頻繁でした。
訪問看護では、1時間しかケアできないのではなく、1時間しっかり患者さんを診て、あと23時間は完璧に大丈夫、と思えるくらいの看護をすることが重要です。これは当時のステーション管理者の先輩から教えてもらった仕事の姿勢なのですが、今でも大切にしています」
そうして8年が経過したとき、大きな変化がMさんに訪れます。
「子供たちも成長し、忙しいながらも自分のペースで楽しく働いていました。しかし、前任の管理者が退職し、私が後任になったんです。管理者の仕事はステーション全体の運営です。スタッフの管理や経営的な視点も求められ、とにかく大変でした。人手が足りない時には今まで通り訪問看護もこなします」
管理者業務に加え現場での看護業務もあり、書類の整理などで終電近くまで勤務することもありました。精神的な消耗に加えて、体力的な負担も大きかったといいます。
「業務内容やシフト決めなどのメンバーとのやりとりなどにも疲れてしまうようになり、管理職は自分に合わないと感じてストレスも大きかったですね。やがて、転職を考えましたが、50代を迎え、転職できるタイミングもこれが最後かもしれない、と思ったんです」
再度の転職活動について
訪問看護から老人ホームへ
コンサルティングで見えてきたやりたかった仕事
会社からは管理者でなく、一スタッフとして続けてほしいという提案もあったといいますが、Mさんは断ったそうです。そうして10年間働いた訪問看護ステーションを退職し、転職する決意を固めます。
「一度、気持ちが下を向いてしまうと、モチベーションが途切れてしまって、同じ場所で頑張ろうという気持ちになれなかったですね。そして、再びナースコンシェルジュに連絡を取りました。担当してくれたのは10年前と同じコンサルタントの方。率直に自分の気持ちを話すことができました。
何回か転職を経験しているのでわかるのですが、いろんなエージェントがあります。登録するとすぐ、ネットで候補を送ってくるところ、面接の設定まで全て電話で完了するところなどです。ナースコンシェルジュは実際に会って相談できましたし、面接対策や履歴書の添削もしてもらえて丁寧な印象でした。」
Mさんはコンサルタントと面談で話しているうちに、自分の本当の気持ちに気づいたといいます。
「訪問看護で担当する地域は賑やかで、仕事は楽しくやっていました。でも、振り返ってみると、暑くても、雨でも毎日毎日、自転車で行き来するのはかなり負担でした。訪問が立て込んでいる時など、昼食をとる時間もないほどです。これからもこの生活を続けていくことは無理だな、と思いました。次は移動がない仕事をしたいと思いました」
転職先の候補がいくつかあった中で、Mさんが選んだのは有料老人ホームです。
「決め手になったのは施設での勤務だったこと、通勤しやすいこと、そして定年が65歳、嘱託だと70歳まで勤務できることです。実際に65歳まで働くかどうかは別として、自分で選択できることが大きかったです。定年が60歳だとしたら、転職して3〜4年で定年を迎えてしまう。せっかく転職してそれは嫌だなと思ったんです」
お話を伺ったのは、老人ホームでの勤務が始まって一ヶ月ほど経った頃、Mさんに仕事の内容についても聞きました。
「出勤した後、入居者さんについての情報収集を行います。そしてラウンド、処置、薬の管理、食事やリハビリの見守り、往診の準備やその介助などで1日はあっという間です。入居者さんの状態に変化があった時にはご家族へも報告します。ご本人にもご家族にも、丁寧に接することを大切にしています。
このホームでは介護スタッフさん、ケアマネージャーさんと看護師が連携して入居者さんを診ています。スタッフは、どうやったら入居者さんに快適に過ごしてもらえるかを常に考えていて、優秀な人が多いなと感じています。各職種が情報を連携していい看護を目指したいですね。
訪問看護では限られた時間しか患者さんに接することができませんでしたが、今は時間をかけてつぶさに見守ることができます。人生の最晩年を、1日でも長く、人として尊厳を持って過ごしていただけるようお手伝いしていきたいです」
転職についてのアドバイス
若い時に得た知識は裏切らない。
積み上げたキャリアを武器にした転職を
「ときどき、自分のやりたい看護はこれじゃない、と言って転職していく人に会うことがあります。でも私は看護の基本は同じだと思っています。
しっかり患者さんをみて、今起こっていることを正確に把握することに尽きます。例えば、手術に臨む患者さんは麻酔で眠っていますから、苦痛を訴えることができません。それだけに普段以上によく患者さんを観察して小さな変化でも見逃さないように、危険を回避することが求められます。
私はこうした看護の基本を大学病院の手術室に勤務していた頃に身につけました。1年目、2年目、3年目と見えることはどんどん進化していきます。できれば3年、もっと欲張るならリーダーとして人を動かす経験を積んでから転職してほしいと思います。
私もそうですが、若い時に得た技術や経験は忘れません。五十代になって仕事を選ぶことができるのも、看護師を始めて間もない頃に基本を身につけたからだと自負しています。
最初の職場でしっかり技術を積み上げてから転職すると、そのキャリアはずっと有効に使えますよ」
Mさんのお話の中にもある通り、看護の仕事に楽な職場はほぼないと言えるでしょう。どこの職場でも苦労はあると思いますが、苦労が大きい分、学ぶこともあるのだと思います。それを乗り越えて得られる経験や成長は看護師のキャリアとして必ずご自身の力になってくれると思います。
とは言っても、あまりに理不尽な環境でご苦労されている方をよく見かけます。大変な環境の真っ只中にいると、その見極めが自分だけではできなくなってしまうこともあるかと思います。
あなたが今いらっしゃる職場は、もう少し頑張った方がいい環境なのか、それとも職場を変えるべきなのか。日々のコンサルティングでは、多くの看護師の方の転職をお手伝いしてきた立場から、実例を踏まえたアドバイスをしています。
頑張って続けるべきか、環境を変えるべきか、迷っている方は、どうぞお気軽に相談してみてください。