#33
多忙な現場を卒業。理想だった「寄り添う看護」ができる療養型病院へ。
PROFILE
Oさん 50代 臨床経験 30年以上
転職を考えたきっかけは?
「介護休暇も取れない」。25年間勤務した病院に生まれた不信感
Oさんが最初の転職を決めた当時、勤務していたのは公立の総合病院。25年という長期間、一つの病院でキャリアを積んできました。
ある時、お父様が病気になり、そばで看病したいと願ったOさんは、職場に介護休暇を申請しました。しかし、休暇が許可されないどころか、上司である師長から返ってきたのは「休みが必要な時には年休で対応して」という思いやりのない言葉。
なんとか年休をやりくりして看病を続けたOさんでしたが、ある日、とてもショックを受けた出来事があったと言います。
「亡くなられたある入院患者さんを看病されていたお嬢さんがいたのですが、彼女は別の病院に勤務する看護師でした。
ある時、彼女が職場に介護休暇の書類を提出するので、介護期間を担当医に記入してほしいと書類を持ってきたんです。
その書類を見た私が、思わず聞いたところ、彼女の病院では書類に記入された期間がそのまま介護休暇として認められるそうです。さらに、『親の介護に期限はないから。』と声をかけてもらえた、とも。」
その話を聞いた時、Oさんの心は壊れそうになったそうです。
「同じ看護師として働いているのに、この違いはなんだろうとつらくなりました。まして、私はこの病院に25年も勤務しています。こんなに頑張ってきたのに、親の病気の時に介護休暇さえもらえないなんて。もう仕事を辞めてしまおうか、と考えました。」
そして、転職を考えるようになったそうです。
転職活動と転職の決め手について
「辞めてしまうのはもったいない」コンサルタントの一言で転職を決意
Oさんが職場に対して不信感が募り、仕事を辞めてしまおうかとさえ思っていた頃、会ったのがナースコンシェルジュのコンサルタントでした。
「コンサルタントの方にお会いした時には病院への失望感でいっぱいでした。私は心の内の辛い気持ちを吐き出すように、ぶつけてしまいました。
そんな私の話をコンサルタントの方はずっと黙って聞いていてくれたんです。そして看護師を辞めてしまおうかと言った私に対して
『今、辞めてしまうのはあまりにもったいないです。Oさんに合う職場を私が探しますから。』と言ってくれたんです。その一言でとても安心できましたね。」
そして本格的な転職活動が始まりました。
「希望条件は、急性期病棟であること、通勤時間、年収が極端に下がらないこと、などです。
ひさしぶりの就職活動で、わからないことだらけでしたが、すべてコンサルタントの方に教えていただきました。履歴書や志望動機はしっかり添削してもらえましたし、面接での受け答えも練習して、準備は万全でした。」
そして、三つの病院で面接に進み、その中でOさんが転職を決めたのは約300床の総合病院です。決め手となったのは、面接での看護部長の言葉だったそうです。
「看護に対して信念のある方だと感じました。
私が持つ認定士の資格を生かしたいと話したところ、あなたの資格はどこでも生かすことができるから、自分で活躍の場を広げてほしいと言ってもらえました。それで、この人についていこうと思ったんです。」
転職先の仕事について
「患者さんに向きあう」。自分の看護スタイルを貫く
看護部長との出会いをきっかけに転職を決めたOさん。配属先は急性期の混合病棟です。
「師長は穏やかな人で、忙しいながらも職場の雰囲気は悪くありませんでした。でも、その
師長が代わって新しい師長が来ました。初めて師長になった方で、メンバーより自分を守るのに精一杯な様子が見受けられましたね。
というのも、この病院は、看護師は医師からの指示や処置をミスなく行うことが最も重要な仕事。医師と看護師の連携が一方通行で、患者さんに寄り添う看護は二の次になっているように私には感じられました。
もちろん、ミスなく処置をすることはとても重要です。
けれど、ここでは業務はできるけれど、私が大切にしている『患者さんに寄り添う看護はできないかもしれない。』そんなふうに思うこともありました。
でも、私は自分の看護スタイルである「寄り添う」姿勢を貫いて、患者さんに向き合うことを追求しましたね。」
そうしたOさんの姿勢は、時に批判されることもあったといいます。
「ある時、重篤な患者さんに処置をしたドクターに、急変の可能性があるので、そのまま残って当直をしていただけるようお願いしました。
すると、『出過ぎたことをするな! ドクターの言うことを聞けないなら辞めろ!』と怒られました。それだけじゃなく、始末書を書いて謝罪を求められたんです。
この病院へ転職するきっかけとなった、尊敬していた看護部長さんはその頃すでに退職されていて、私の入職時とは院内の雰囲気も変わっていました。
後任の看護部長や師長が私の味方をしてくれたことは一度もなく、『謝って!』の一点張りです。
でも、私も諦めませんでした。患者さんのため、スタッフのためにと何度も意見しましたね。その度に、お叱りを受けました。」
それでも、Oさんは自分なりの看護スタイルを追求してきました。
5年目を迎えた時、危険な状態の患者さんの処置を当直医にお願いしたことが問題になりました。担当医に連絡がなかったというのです。
「連絡する時間も惜しいほど、一刻を争う処置をして、事なきを得たのに、なぜ悪いのだろうか、この状況はなんだろう、って冷静に考えました。
私が意見を言い、疑問を呈したことで患者さんに不利益を与えたことはありません。全ていい方向へ向かっています。
私は誰かを否定するのでもなく、言うことを聞かないわけでもありません。チームの一員として医療に参加しているだけなのに。
それなのに、どうして始末書を書いて謝罪しなければならないのか。始末書ってドクターの機嫌を損ねたら書くものなのかな、って悲しくなりました。
そして、もうここにはいたくない、退職しようと決めました。
二度目の転職活動と新しい職場について
「今までよく辛抱されましたね。」その一言が前へ進む勇気をくれた
退職を決意したOさんですが、年齢的なこともあり看護師を続けるのは難しいかもしれないと感じていたそうです。
再びナースコンシェルジュのコンサルタントと面談し、これまで感じていた理不尽な思いをぶつけたそうです。
「コンサルタントの方は私の話をずっと静かに聞いてくれました。そして私が話し終わると『そんな環境でよく今まで辛抱されましたね。そこまで耐えた上での退職決意ですよね。もう十分頑張ったと思います。』と言ってくれたんです。
その一言で救われました。そして看護師を辞めて別の仕事を探してもいいと言う私に、
『これでやめてしまうのは惜しいです。今、Oさんに必要なのは上司との信頼関係ですよね。信頼できる方々がいる職場を私が知っていますから』と言ってくれたんです。」
そうしてOさんの二度目の転職活動が始まりました。候補となったのは療養型の病院です。
「志望動機の添削や模擬面接など、対策を万全にして面接に臨みました。
初めての慢性期勤務になるので緊張しましたが、コンサルタントの方が面接に同席してくれたので頼もしかったですね。
面接でお会いした、先方の看護部長さんと事務長さんは、私が話しやすいよう、緊張をほぐすように雰囲気を作ってくれました。
驚いたのは院長先生が面接に同席してくださったことです。事前に私が提出した書類に目を通していて、私をわかろうとしてくれたことが嬉しかったですね。
とても話しやすい方で、私が『慢性期は初めてなので何度も質問してしまうかもしれません』と話すと、『もちろんです。何でも聞いてください』と言ってくださいました。
今まで、上司からそんな言葉を聞いたことはありません。涙が出そうになり、院長先生の顔が見られなかったほどです。
そして、その場で『ぜひ来てください』と言っていただけました。」
Oさんは現在の職場から退職の承諾を得て、転職に向けて準備中です。
一貫して急性期病棟で最新の技術や機械に触れながらキャリアを積んできましたが、慢性期へ移ることに不安はないのでしょうか。
「急性期はやり切ったと言う思いが強いです。これからは患者さんのそばにいたいですね。今まで、技術の習得にあてていた時間を患者さんのために使えることが楽しみなんです。私が看護師として大切にしている『寄り添うこと』がようやくできる時が来たと思うと嬉しいですね。」
これから転職する方へアドバイス
完璧な職場はない。どこまで譲歩できるのか考えて
「次にやりたいことを見つけて、ステップアップするための転職ならば、『いってらっしゃい!』と喜んで送り出します。
でもそうではないこともあります。ただ嫌だから、と言う理由でする転職は、「どこに行ってもいいところも嫌なところもあることを覚悟して」とアドバイスしてあげたいですね。
ですから、嫌なところがあっても、どこまで譲歩できるのか考えてみてほしいですね。
そして、自分なりにアレンジして乗り越えて、独自のHOW TOを見つけてほしい。それがスキルアップにつながります。
ただし、基礎固めができていないと自分のやり方を見つけることは難しいです。転職する前にはしっかりと基礎を固めることも重要だと思います。
そして、自分を理解してくれるパートナーがいるととても安心できます。
私の場合はいつもそばで話を聞いてくれて、的確なアドアイスをくれるコンサルタントさんと出会うことができました。この方がいなかったら、今の私はないと思います。
本当に信頼できるから、後輩にもこのコンサルタントさんを紹介したいと思っているところです。」
Oさんとは二度の転職をサポートをさせていただき、長いおつきあいになります。
インタビューの中にもあるように、キャリアの段階によってご自身が仕事に求めるものが変わってくることは当然のことです。
キャリアを重ねていく中で、また、ご自身のライフスタイルの変化によって職場に求めるものは変化していきます。
Oさんも最初は急性期での転職でした。
数年後の二度目の転職では、定年まで落ち着いて働ける場所を希望され、ナースの集大成として療養型病院で働きたいという気持ちが高まったとのことです。
また、Oさんご自身がご親族の介護を経験されていて、そのことが今回のご決断の後押しとなった、ともお話しされていました。
私たちのサポートは、単純に急性期か療養期か、というご希望を伺うだけでは足りないと思っています。
どうしてそう思うに至ったのか、お一人お一人の背景や看護への思いなどをしっかりお聞きし、それに基づいたコンサルティングをしています。
今回ご縁のあった職場は、院長先生、看護部長、事務長を筆頭に、院内の雰囲気がとても良く、多くのナースの皆さんが願う、本当に患者さんのために看護を尽くすという働き方ができる職場です。
興味があるとお感じになった方は、どうぞお気軽にお問い合わせください。